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2021/04/10

【徹底解説】EC事業者による「事業再構築補助金」の活用法

【徹底解説】EC事業者による「事業再構築補助金」の活用法<!--hoshino-->

はじめに

2021年3月31日に概要が開示された「事業再構築補助金」ですが、前評判に反し厳しいものとなっていることでやや落胆の声のほうが大きく聞こえる印象を受けています。ただ、本当に新たな分野にチャレンジしようと思う場合には非常に有用且つ条件に合致する方も少なくない、とても優れた補助金だと思っています。

いろいろ業種や目線からの評価が情報として錯綜しているように見えますが、今回はEC事業者に限った情報をまとめました。ぜひ活用いただければ幸いです。

事業再構築補助金 対象者

まず対象者でなければ話が進みません。結論から言うと対象者は、

  • a.中堅企業以下(中小零細、個人事業主含む)
  • b.申請の直近6ヶ月のうち任意の 3か月の合計売上高が前年より10%以上下がっている
  • c.事業計画を認定経営革新等支援機関と策定
  • d.3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
  • e.「事業再構築」の定義に即していること!
  •  

    の5つをクリアしている方です。

    a.中堅企業以下(中小零細、個人事業主含む)

    EC関連企業においての第一関門がaです。EC関連企業は小売業に属することが多いと思いますので、この場合は資本金が5000万円以下、常勤従業員数50人以下という条件があります。これを超えた中堅企業でも申請は可能ですが補助率が下がります。ちなみに中堅企業は資本金10億円以下、常勤従業員数2000人以下です。

    b.申請の直近6ヶ月のうち任意の3か月の合計売上高が前年より10%以上下がっている

    次の関門としてはbかと思います。コロナ禍における巣篭もり需要の恩恵を受けたEC事業者も少なくないと思います。そのような場合は前年度よりも売上が増加していることもあるかと思います。

    c. d. e.

    c, dは比較的簡単ですが、認定経営革新等支援機関は本補助金を含むコロナ関係の各種補助金の対応で大忙しのようです。場合によっては受託してもらえない場合もあると思いますので、本当に進めていくつもりがある方は、早めに契約をしておくことをおすすめいたします。

    dは一見難しそうに見えますが、5年間の付加価値額が平均3%上昇している計画書であること。となりますので、達成することが条件ではありません。なので対象となる難易度は低いです。しかし当然ですが事業計画の実現可能性は大きな評価ポイントになりますので、誰が見ても達成できるであろうというしっかりとした事業計画を作成する必要があります。

    最後に、巷で本補助金が複雑だと言われるのがeになります。ここは分かりづらいという方も多いので詳しく説明します。

     

    「事業再構築」の定義

    どのような事業が本補助金の対象となるかという定義です。

    まず類型と呼ばれております(ここでは事業のパターンと呼びます)が、5つあります。

    • 新分野展開
    • 事業転換
    • 業種転換
    • 業態転換
    • 事業再編

    今回EC事業者に特に関係あるであろう、「新分野展開」「事業転換」「業種転換」の3つに絞って説明します。

    この3つのどれを選ぶかが非常に重要です。なぜならばこれによってビジネスモデルが変わるので、最重要提出書類である事業計画が大きく変わってくるからです。

    まず、この3つは共通して以下の2つの条件をクリアしている必要があります。

    1. 製品等の新規性要件
    2. 市場の新規性要件

    詳細は以下のとおりです。

    1.製品等の新規性要件

    ①過去に製造等した実績がないこと

    過去に製造等していた製品等を再製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。過去に製造等した実績がないものにチャレンジすることをお示し下さい。

    ②製造等に用いる主要な設備を変更すること

    既存の設備でも製造等可能な製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。主要な設備を変更することが新たな製品等を製造等するのに必要であることをお示し下さい。

    ③定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)

    性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製品等であることをお示し下さい。(例:既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等)

     

    2.市場の新規性要件

    ①既存製品等と新製品等の代替性が低いこと

    市場の新規性要件を満たすためには、新製品等を販売した際に、既存製品等の需要が単純に置き換わるのではなく、売上が販売前と比べて大きく減少しないことや、むしろ相乗効果により増大することを事業計画においてお示しください。(例)日本料理店が、新たにオンラインの料理教室を始める場合、オンライン料理教室を始めたことにより、日本料理店の売上は変わらない(むしろ宣伝による相乗効果により上がる)と考えられることから、市場の新規性要件を満たすと考えられる。

     

    色々と書いてありますが要は、認定経営革新等支援機関との連携をした上で、

    • 過去に作ったことある商品はNG
    • 他とかぶることはNG → 全く新しいチャレンジであること
    • 新しいことをやったことで既存の売上が下がらないこと

    が満たされていればOKです。

    よくご質問いただくのですが、日本で化粧品を販売しており、「本補助金を使ってはじめて中国に販売してみたいです!」という場合はNGです。なぜならば過去に作ったことがあるからです。

     

    業種・事業と5年後の売上要件

    「新分野展開」「事業転換」「業種転換」のどれに属するかは、現在の業種・事業から、どのように事業を再構築するかによって異なります。

     大分類(業種)中・小・細分類(事業)
    新分野展開変更なし変更なし
    事業転換変更なし変更あり
    業種転換変更あり

    表中の「大分類」「中・小・細分類」というのは、総務省による分類に基づいています。詳細は以下の総務省のページをご覧ください。

    総務省 日本標準産業分類

    これを元に、現在の事業から、大分類を変更するか、中小細分類を変更するか、全て変更しないか、どこに当てはまるのかを見極める必要があります。(後ほどご説明しますが、この業種・事業の変更具合によって5年後の売上要件が変わってきます。)

    例えば、EC事業者として女性向け化粧品のみを製造販売していたが、新たに男性向け化粧品の開発をするという場合は大分類、中小細分類ともに変わりませんので「新分野展開」を選択することになります。

    また同じ事業者で、新たにサプリメントの商品開発をしたいという場合は、大分類は変わりませんが、中小細分類が変わりますので「事業転換」を選択することになります。

    「業種転換」は、例えばEC事業者が、今までの知見を活かしてEC事業者向けのコンサルティング事業を始めるという場合に大分類がそもそも変わるので該当します。

    そして、この業種・事業の変更に影響を与えるのが、5年後の売上要件です。

     売上要件
    新分野展開新分野比率10%以上
    事業転換構成比最大
    業種転換構成比最大

    新分野展開においては5年後に新事業が全体の10%の売上を占めている必要があり、それ以外は新事業が全体の売上で最大となっている必要があります。

    この売上要件は、達成しなければ補助金返金というものではないものの、審査の過程で実現可能なのかどうかが判断される肝にもなってくるので、業務・事業は慎重に検討する必要があるかと思います。

     

    まとめ

    情報が複雑ですので、なるべくシンプルにまとめました。そのため詳細は割愛しているので、まずはこの情報の中だけでも条件を満たすか、または本気で取り組めそうかということをご検討いただけますと幸いです。

    そのあとは、今回は原則として認定経営革新等支援機関との連携が必須ですので、ぜひご相談いただければと思います。

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    HOSHINO

    ECのことを中心に書きたいと思います。 ネタが無いときはプログラムやデザインのことも書きます。

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